Lesson05-3 薬膳の基本 帰経

帰経とは

今まで説明して来た食薬の効能で、それがどの内臓にどう作用するのか解説して来ました。そのように生薬や食材がどの様な反応を見せるのか示したものを『帰経(きけい)』と言います。また、この『帰経』は『五臓』での優先されるはたらきを中心に示しているので、『五臓』で表記して行きます。

なのでここで注意していただきたいのは、たとえ四気五味が同じでも帰経が違えば効能も変わってくると言うことです。

例としてどちらも「涼、酸・甘」の性質を持つ梨とりんごで比べてみましょう。梨は『肺』で作用するのに対し、りんごは『脾』で効果を発揮します。梨は『肺』の熱を冷まして喉の渇きや空咳を和らげ、りんごは『脾』の不調を改善して胃腸の働きを良くしてくれます。

五臓の働きと不調

以前五行説について学んだ時に五臓について大まかに説明しましたが、ここからはもう少し詳しく学びましょう。五臓には『』『』『』『』『』の5つの要素があります。ですが、これはあくまで臓器の機能を系統的に捉えて当てはめたものなので、実際の臓器だけでなくその働きに関するもののことを指します。

五臓

それでは順に五臓それぞれの働きについて説明します。

』は気の巡りを整え、体が支障なく動けるように機能のバランスを取ってくれます。さらに気だけでなく血のコントロールも担当しており、筋肉や神経の働きを調節したり血を貯蔵することも『肝』の役割です。このように気と血の循環を任されているので、いらなくなった物を外へと出す代謝や排泄機能といった生理現象もここで管理されています。もし不調が起こってしまいますと食欲衰退や便秘、他にも月経不順などの症状が現れます。

』では心臓がポンプの動きをすることで血の流れを管理しています。心臓は運動や緊張で心拍数が上がったり、逆にリラックスしていると落ち着いた働きをします。このように細胞が酸素を欲していたり、その時の思考に合った血流の働きを『心』がコントロールします。しかしその『心』のバランスが崩れてしまいますと少しのことで動悸が激しくなったり、感情が引っ張られて不安や不眠といった症状も出てきます。

』は脾臓だけでなく胃腸も含めた消化器官を指します。なので食べ物の消化や吸収を行い、その栄養を体中に送る働きを持っています。他にも体の中央に位置することから内臓の維持や血の漏れを防いだりする保持の役割もあります。『脾』のバランスが崩れると胃もたれや吐き気、栄養や水分が十分に吸収できずに起こる下痢などの症状に見舞われます。

』は呼吸によって新鮮な空気、つまり新しい「気」を取り入れます。また二酸化炭素として汚れた「気」を排出するだけでなく、体内の水分代謝も行ってくれます。『肺』に不調が起きますと呼吸器系の症状のみではなく、水分代謝の異状で皮膚の乾燥も起こります。

』では両親から受け取った生命力を貯蓄して、それを成長や発育、生殖のエネルギーとして使って行きます。成長とは体全体のエネルギーを調整して行っているので、それに伴って全身の水分布や代謝も任されています。もしバランスが崩れてしまいますと、老化が早まったり不妊や頻尿といったトラブルが生じます。

Lesson5確認問題

学習した部分の知識をしっかり定着させましょう!
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