調理することは言ってみれば料理することの専門技術でもあります。なので中国ではこの技術を『烹調(ほうちょう)』と言います。『烹』は柔らかくなるまで煮込むこと、『調』は調和を意味しています。なのでこの2つを合わせた『烹調』は食材を加工して火を入れ、調味料で味を調えて体に合った料理を作ることを指します。薬膳はもちろん知識も大事ですが、それを有効活用する為の『烹調』の技術も必要となって来るのです。
『烹』のはたらき
最も多く使われている烹法は熱を入れる事です。これは強火や弱火といった火力だけでなく、土鍋などの内部で働く余熱も加わります。
なぜ火を使う調理法が増えたかというと、殺菌、消毒が大きな目的です。ほとんどの細菌や寄生虫は85℃の熱や高濃度の食塩水に耐えることが出来ず、消滅してしまいます。どんなに体に良いものだったとしても、体に害をもたらす物と一緒に食べてしまっては元も子もありません。
さらに火を入れる事で柔らかくなったりほぐれたりするので、消化しやすくなります。他にも香りが立ちやすくなったり、色艶を与えてくれたりして食欲を促進させてくれます。
『調』のはたらき
調は字から連想されるように、調味料で味を調節する役割を持っています。下処理として臭みを取ったり、味を確定させたり、お汁粉に少量の塩を入れるように逆の味を足すことで本来の味を際立たせたりするなど、多くの場所で使われます。
調味料は塩や砂糖と言ったそのままの素材もあれば、醤油やみそと言った加工品も加わってきます。さらに国毎に加工調味料は変わってきますし、香辛料も入れたら膨大な数になってしまいます。
ですが薬膳料理の基本は素材の味を活かすことなので、基本的な味付けは単純な塩味や薄味なものが多いです。と言っても、食材として扱ったトウガラシや山椒などの刺激が強い物やハチミツや砂糖などの甘い素材などが味の中心となるので、ここで多くの調味料を使ってしまっては味にまとまりがなくなってしまいます。なので邪魔をせず、うまくバランスがとれる塩が頻繁に使われるです。
調理器具
薬膳料理では土鍋や土缶、陶器を用いて調理します。何故これらが使われるかと言うと、土鍋などは保温性に優れているので余熱の調理も可能ですし、化学反応が起こりにくく食材の栄養素が保たれます。ここで少し注意していただきたいのは、高熱によって栄養が損なわれる食薬もあるので鉄の鍋を使った調理は注意して行う必要があります。