Lesson12-1 治療への考え方 正治・反治

中医学による治療の概念

治療には診断による整体観念と診断を踏まえて合った治療法を行う弁証論治をもって行われます。中医学の治療は『治病求本』を考えの基、成り立っています。これは治療する際に、病因・病機を分析して疾病の本質を見極め、合った治療法を行うという考え方です。

正治

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正治(せいち)』とは「体を冷やす症状には温める物を」、「汗腺が緩んでる場合には収斂作用のある物を」といったように、疾病の症候や性質に相反する治療法を行う事です。この正治は疾病の本質と現れた症候が一致している場合に行われます。ちなみに逆の症状が出る治療法をぶつけるので『逆治(ぎゃくち)』とも呼ばれます。

寒者熱之(かんしゃねっし)

寒性の邪気が原因になって体が冷える症状が現れます。そういった場合の治療法として温熱性の食薬や中薬を用いて、煎じた薬汁やお粥など温かい物を体に取り入れます。

熱者寒之(ねっしゃかんし)

こちらは寒者熱之と逆で、熱性の邪気によって起こった発熱を治める方法です。なので服用する薬や薬膳も寒涼性を持った物を冷やしていただきます。

虚者補之(きょしゃほし)

虚性の効果で気が少なくなり、虚弱症状が現れます。こういった場合の治療は気を養う滋養効果のある食薬や中薬を使用します。

実者瀉之(じっしゃしゃし)

実性の症状とは喘息やげっぷ、便秘など目に見える症状が多いです。こういった物は邪気が溜まって行き易く、進行が進むと他の臓器にまで毒素が染み込んでいきます。なので原因となる部分を早期に発見して、そこの邪気を払う必要があります。

反治

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こちらの『反治(はんち)』は正治とは逆に、現れた症状の性質に順応する治療法を行います。一見症状を悪化させる方法に見えますが、ちゃんとした理由もあります。なお、症状に従う治療法なので別名は『従治』となります。

寒因寒用(かんいんかんよう)

こちらは寒性の症状に対して、寒性の食薬などで対処を行う方法です。しかしこの場合、症状の本質が熱性であることが条件になります。例に挙げますと、高熱が出た時に体が反応して冷やそうとしたところ、逆に寒気や冷えなどの症状が体を襲って、本来熱性の症状のはずが寒性に変わってしまうのです。このような事態の時に使われる治療法です。

熱因熱用(ねついんねつよう)

こちらも寒因寒用と同様、熱性の症状に熱性の食薬を与える対処法です。なお、症状の本質が寒性であるのが条件なのも変わりません。

塞因塞用(そくいんそくよう)

虚性の症状によって気の量が減ると、それに比例して循環する通路も狭くなって閉塞的になってきます。そうなると渋滞が起こって一部分に気が集中してしまい、胃もたれや腹膨など何かが溜まっているような症状が現れます。この場合、気を補う食薬などを用いて気の量を増やし、通路を押し広げて行きます。こうすることで十分な量の気が循環するようになり、症状の治療へと発展します。

通因通用(つういんつうよう)

こちらは逆に下痢などといった通路が開きっぱなしになる事で起こる症状の治療です。ただしこの場合の下痢は食べ過ぎによって起こる物なので、下剤を与えて溜まったものを吐き出します。毒素さえ取り出せば自然と収斂するので、症状を促進させる中薬が多いです。