Lesson12-2 治療への考え方 その他

治標と治本

治標(ちひょう)』と『治本(ちほん)』という似た言葉があります。これらはどちらも治療を行う行為ではあるのですが、それまでの経緯に違いがあります。

まずは治標について説明します。

こちらの「標」という言葉は表に現れている症状のことを指しており、表面的な症状の治療を行う事です。急病の場合、患者が最も苦しんでいる症状を治める必要があります。つまり食べ過ぎや体を冷やしたなど、病状が直接的で急性の発病だった場合に用いられる治療法です。

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治本は疾病の本質を見極めて行う治療のことです。積み重なってきた生活習慣によるツケが病状として現れた場合、一見どれが原因で発病したのかが分かりません。その為に慢性病の治療では何が原因で発症したのか、本質を調べて確実な方法で根本的から解決する必要があります。

ちなみに、慢性病を持ちながら急性の発作が現れた場合の治療法を『標本兼治(ひょうほんけんち)』と言います。たとえば元々慢性的な喘息を持っている患者には収まっている時期に補腎潤肺の治療を行い、風邪が発病した時にはいつもの補腎潤肺の治療を行いつつ解表薬を併用していただきます。

因時制宜(いんじせいぎ)

「時間に因る」と書かれているように、こちらの治療は時間を踏まえて行う物です。しかしその時間というのも食前、食後などといった簡単なものではなく、季節風などの気候変化、四季の移り変わり、太陽の昇落規律、月の満ち欠けなど、多くの自然法則を踏まえた上で行う治療になります。

因地制宜(いんちせいぎ)

こちらは患者の環境を踏まえて行われる治療です。ここで注意していただきたいのは、場所が変われば文化が変わるようにその人の生活習慣も十人十色に変わってくるのです。ここで考慮する要素の日光や水、土壌、その土地の気候などを頭に入れつつ、環境に合わせた治療を行います。

因人制宜(いんじんせいぎ)

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これは患者に合わせた治療を行うという事です。聞いてみれば当たり前な事なのですが、患者の元々の体質であったり年齢によって疾病に対する反応は個々で変わってきます。もっと単純な話になりますと男女の間でもかかる病気、対処法は変わってきます。他にも気候や環境で変わって来る生活習慣や飲食の文化も人それぞれになってくるので、同じ疾病でも目に見える症状は異なります。なので治療を行う際には患者を『人間の体』として扱うのではなく、年齢や性別、生活習慣などを加味した『1人の患者』として扱って適切な治療を行わねばなりません。

 

Lesson12確認問題

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