治療を行う際、厳守しなければならない基本原則があります。それを『治療原則』と呼びます。この治療原則には3種の原則があります。
『扶正』『袪邪』『調和』の3つです。臨床に当たる際にはこれらのどれかを選別したり、併用、または順序立てて行う方法などが用いられます。
扶正(ふせい)
扶正の「正」は正気を指しています。正の気を支える事で体質を強化して、気の働きを向上させる方法です。
疾病が起こるかどうかは正気と邪気の力量差が原因となってきます。正気が邪気に負けると発病してしまいますが、逆に正気を高めると抵抗力を強めることが出来ます。そうすることで肉体面の疾病を予防することが出来ます。また、肉体が万全であれば環境の変化に対する調整力も高めることが出来るので、精神的な疾病も予防することが出来ます。
このように扶正に心掛けて陰陽のバランスを整えることができれば、肉体的にも精神的にも疾病の予防が可能になるのです。このバランスを取る方法を『陰平陽秘(いんへいようひ)』と呼びます。
袪邪(きょじゃ)
袪邪とは体に巣食う邪気を払う事を言います。
疾病の原因は「六淫邪気」や「疫癘邪気」などといった自然界、つまり外部から邪気を取り込んだことによる『外因』と、ストレスなど精神面から体調を崩す『内因』、さらには飲食や生活習慣など多くの要因が積りに積もったことで引き起こされる『不内外因(ふないがいいん)』などが挙げられます。
つまり袪邪はこれらの原因を消滅させ、体を正常に戻す原則のことなのです。
調和
調和とは文字通り、体に起こった不調を正しい形に戻し、健康な状態へと戻すことです。精・気・血・津液が足りなければ滋養し、精神が危うい状態なら安静に過ごせるよう調節するなど、このように本来あるべき形へと戻すことを趣旨に置いています。
食生活が乱れた場合、旬の食材を使った料理を口にすることが最も簡単な調節とも言えます。
八法
現在、上記の治療原則を則って確定された治療法は20種類以上あります。その中でも最も古く、基礎となっている治療法が『八法』です。清時代の人物、程鐘齢によって記述された『医学心悟・医門八法』にまとめられており、『汗』『吐』『下』『和』『温』『清』『補』『消』の8つが挙げられます。中でも『補』は扶正、『和』は調和に当たり、他の六法は袪邪になります。
『汗法』は汗を通して、『吐法』は嘔吐などの方法を用いて口から、『下法』は便を通して邪気を外に吐き出す治療法です。『和法』は見ての通り調和を用いた治療法です。『温法』は温める事で寒邪を、『清法』は冷ますことで熱を払い飛ばす治療法になります。『補法』は足りない要素を補って健康へと導き、逆に『消法』は滞った邪気を取り除いて体の調子を整える方法です。
基本はこの八法に分かれて細分化していきますが、邪気の原因やどの部分が悪化しているかなど、様々な点から考慮する必要があるので自然と治療法が多くなっていきます。
Lesson13確認問題
学習した部分の知識をしっかり定着させましょう!
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