漢方の発祥とその生い立ち
Lesson1でも説明したとおり、漢方の歴史は古く約4000年前から生まれたと考えられております。まずは発祥の時代、『夏』の時代から出発して行きましょう。
原始社会から脱却し、中国の歴史上で最初の国家である『夏』が誕生した時代。さすがに漢方のような複雑なものがすぐに発展したわけではありませんが、穀類から作り出した酒がこの時代の薬となり、漢方への第一歩となりました。
貨幣や文字が生まれ、社会の発展が進んだ『商(殷)』の時代。この時代から中華料理の代名詞でもある火を巧みに操ることができ、ある料理人がスープから中薬の煎じ方を考案して煎じた『湯液(とうえき)』を開発しました。さらにこの時代から病名や灸、針、按摩(あんま)術、薬物を用いた治療が生まれ、中医学の急成長が始まります。
『夏』の時代から約1000年経った『周』の時代。この時代から医療各分野に制度が設けられ、「医師(医療法律や政策を担当する管理職)」「食医」「疾医(しつい)」「瘍医(えきい)」「獣医」の分野が誕生しました。そして時が進むにつれて『山海経(せんがいきょう)』『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』『五十二病方(ごじゅうにびょうほう)』などの医学書が生成されます。その中でも『黄帝内経』という書物は中医学の理論体系の基礎を作り上げ、中医学の経典とも呼ばれています。
そして漢方にとって最も関係がある『漢』の時代。この時代に中国で最初の薬学専門書『神農本草経』と中医臨床の弁証論治の基礎を定めた『傷寒雑病論』の2つが誕生しました。この2つに加え前の時代に誕生した『黄帝内経』の三書が漢方の基礎を作り出したのです。この発展により東洋医学という独特な理論体系が生み出されました。ちなみに少し余談ではありますが、三国志にも登場してくる華佗により麻酔作用のある「麻沸散(まふつさん)」が作られたのもこの時代です。
そしてより発展して行った中医学は文化や宗教などと共に広がって行き、日本にも7世紀初めの遣隋使派遣以降、仏教と共に伝わって来ました。最初は中医学の真似事をしていましたが、場所が変われば扱う材料も気候も変わるため徐々に日本風の医学へと変貌して行きました。
薬膳としての歴史
薬膳という言葉自体は430年頃に作られたと考えられる『後漢書(ごかんじょ)』に初めて記載されていました。しかし薬膳の歴史として見るともっと昔の『商』の時代の料理人「伊尹(いいん)」が有名です。上記の『湯液』を開発したのも彼で中華料理の第一人者とも呼ばれ、料理のコツを国の統治と関連させて料理人から政治家へと転身した経歴も持っています。それと『夏』の時代に飲用だけでなく治療にも使用していた酒も薬膳の元祖と言えなくもありません。
Lesson2確認問題
学習した部分の知識をしっかり定着させましょう!
ここからLesson2の確認問題を行なうことができます。