漢方となる食物
これまで漢方の基本や歴史について学んで来ました。なのでここからは実際漢方がどれだけあり、どのような作用をもたらすのか学んで行きましょう。
まず皆様が漢方薬と考えている薬、それは中医学理論を基礎にして作り上げられた薬であり『中薬(ちゅうやく)』と言います。また、食用と薬用、その両方として扱えることが出来るものを『食薬(しょくやく)』と言います。
世界中に溢れる豊富な食材の中から、中薬として調査され『中薬大辞典』に記載されている物は12,807種類あります。さらに分類すると植物は11,146種類、動物は1,581種類、鉱物は80種類に分けられます。
ここからさらに薬効の種類別に学んで行きましょう。
解表類
『解表類(げひょうるい)』とは汗をかくことで体の表面に溜まっている邪気(病気を引き起こす原因の総評)を洗い流す考えを基礎に、治療を行う食薬の総評を言います。この食薬に適した症状は四季に関係なく、1年を通して見られる一般的な風邪に当たります。
しかし注意点が2点あります。1つは汗をかくにしても体を温めて少し出す程度でいいこと、もう1つは薬効が損なわれる可能性があるので煎じる場合は沸騰して5分ほどで大丈夫だということです。
辛温解表類(しんおんげひょうるい)
解表類の中でも2種類に分かれます。その内の1つ『辛温解表類』と言います。
こちらの種類は温性、辛味に特化しており、発汗の作用が強い物です。主に晩秋から春先までの寒い時期に用いられ、熱や頭痛、鼻詰まりなどの風邪の症状に効きます。また、梅雨の時期に発症する冷え性や下痢などの場合にも使われます。
有名な例としましてはショウガが挙げられます。
体を温める代表的な食材の1つであり、香り付けなど食用にもよく用いられるので比較的簡単に扱えると思います。注意すべきところは大量に摂取してはいけないことです。体を温めるということは血の巡りを良くする事でもあり、充血や痔などを返って悪化させてしまう危険性もあります。料理やお茶などのちょっとしたアクセントや下準備で扱うことをお勧めします。
他にも白ねぎやパクチー、ミョウガ、シソなども効果的です。
辛涼解表類(しんりょうげひょうるい)
上記の辛温解表類とは逆に晩春から秋の暖かい時期に用いられる、涼性と辛味を持った『辛涼解表類』があります。こちらも風邪の症状や鼻詰まり、のどの痛み、痒みなどに効果をもたらします。
代表的な例は薄荷(ハッカ)があります。聞き慣れない方にとっては「ミント」と呼んだほうが馴染み深いかもしれません。料理の風味付けやデザートなどの清涼感を出すために使われますが、こちらも立派な漢方の1つなのです。
発熱や無汗、充血、頭痛、麻疹(ましん)など多くの症状に対抗できる優れた食材ではあるのですが、強い効果を持つ物は同時にデメリットも抱えています。虚弱者に多く発汗させてはならない、ため息が頻発するなどの肺に関する症状は他の薬と同時に煎じる必要がある、生の物を多用すると胃痛や舌の痺れが起こる可能性もある、妊婦に使用してはいけないなど、様々な注意が必要となります。
他には菊の花やクワの葉などが例に挙げられます。