安神平肝類とは
安神平肝類(あんしんへいかんるい)とは心をリラックスさせ、緊張や不安を治めてくれる食薬のことを言います。中医学では精神を安定させるには心と肝が肝心だと考えられています。心は集中力や思考能力を高めて反応を良くし、肝は気分を落ち着かせてくれます。よって心と肝が正常に働くことで精神が安定し、リラックスできる状態となるのです。
安神類(あんしんるい)
安神平肝類の中でも心に作用する食薬の多くが分類されている安神類は、主に動物の骨や鉱石、植物の種子などが多く見られます。そして特徴的なのは動物の化石や琥珀など、長い年月をかけて出来上がった鉱石もこちらに分類されることです。
血を正常にさせることで、全身に血を送り続ける『心』と血を溜め込む『肝』の滋養を行います。しかし心は最も大事な臓器であるため、大なり小なりの作用をもたらす安神類を長期にわたって使用することは控えるべきです。もしこの種類の漢方を口にする時はお医者様と用量などをちゃんと話し合って服用することが大事になります。
また、代表的な食薬が化石であるため普段の食事に取り入れることは困難です。もし摂取しようと考えるのでしたらコーン(トウモロコシ)をおすすめします。調理法はご飯として炊いたり、お粥やスープにしていただくことも可能です。そして精神を安定させる働きも脾胃を中心にして働くので心への直接的な作用は起こりません。
平肝熄風類(へいかんそくふうるい)
この種類の食薬を説明する前に、風の症状について説明する必要があります。
風の症状は2種類あり、「外風(がいふう)」と「肝陽上亢(かんようじょうこう)・肝風内動(かんぷうないどう)」に分かれます。前者の外風は自然界で生まれる風邪(ふうじゃ)が体に悪影響を及ぼすことで発生する頭痛やめまい、発熱などの症状を言います。
後者の肝陽上亢・肝風内動は肝機能の異常によって体の内側から発症する頭痛や痺れ、痙攣などのことを言います。この症状を改善するための食薬が平肝熄風類です。
また平肝熄風類には平肝熄風(へいかんそくふう)と平肝潜陽(へいかんせんよう)の2種類の働きが存在します。痺れや痒み、痙攣には平肝熄風の働きを持つ食薬を、頭痛やめまいには平肝潜陽の働きを持つ食薬を用います。
この分類での有名所は牡蠣ですが食薬になるのは中身ではなく、貝殻の部分です。さすがに貝をそのままバリバリと食べることはせず、砕いて粉状にしたものを煎じたり服用したりするのが主流です。中身の部分は後のページに登場する「滋陰類」に分類されるので、今回は説明を省かせていただきます。
他にも真珠やウミガメの甲羅などを煎服したり、食虫文化が乏しい日本では考えにくい蚕やミミズ、サソリなどもこの種類に分類されます。
開竅類(かいきょうるい)
開竅類とは香りを用いて意識を明確にさせ、食欲を誘う食薬のことです。意識障害や食欲不振などに陥った時、使用されます。
この種類に該当する食薬は菖蒲(ショウブ)です。端午の節句でお風呂に入れて菖蒲湯にする方もいらっしゃるかと思いますが、その強い香りで邪気を払うという考えは漢方にも精通するのです。
粉末にした菖蒲を煎服することで意識障害や痙攣、不眠、痴呆、食欲不振、胃もたれなど多くの症状を改善してくれます。